ここはかくれが、ふたりきり。

わたしがいて、あなたがいる。あなたがいて、わたしがいる。どちらが先かに意味はなく、このひとときに、ひとりになれる。

ここは高知でとなりは君で、旅路の空はかくも語りき。―行程ノ四:8/21―

 4日目のルートはこちら。今日は午後からカヌーの体験があるだけで、前にも後ろにも予定が入っていない。少し姫鶴平を散策して、8時前くらいには感動体験・四国カルストを後にしたような覚えがある。語ることもそう多くはないので、写真でかさ増ししながら徒然なるままに書き散らしていくことにする。

 

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 気がつくと放牧されていた三頭の牛のうちの一頭。ションベンするわ何が気に食わんのかモーモー鳴き続けるわで、牛だなあという訳の分からん感想を抱いた。ちなみにもう少し離れたところに牛舎があって、完全に柵の外に出てたヤツと睨み合いをした。何を考えているのか、私には分からなかった。もっとも、ヤツも同じように思っていることだろう。乳牛かな?

 

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 小さいけど、電柱の下に佇んでいるのが例のヤツ。

 

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 これが四国カルストの大地。めちゃくちゃゴツゴツしてた。それにしてもガスがよく出ている。負けじと私もガスを放ってみたが、残念ながらガスとしての格はアチラが上だったようで、虚しく霧消してしまったようだ。そもそも目に見えんがね。

 

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 こういう看板があると、「○○に行ってきました!」感が増すよね。こういう所で撮った写真を後で眺め返すといつも思うんだけど、まったく記憶に残ってないんだ。音とか、匂いとか、気温とか。確かにそこにいたはずなのに、ファインダーを通しただけでまるで別世界のように感じられてしまう。きっと、私の写真が「その時その瞬間」を切り取ることができていない証拠なんだろうなとも思ったり。別に芸術性なんか写真に求めていない私にとっては、その時間をありありと思い出させてくれる写真というものが辿り着くべき境地なのだろう。

 

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 まあなんか、こんな感じの景色。すっきりしない天気だったということも、私の記憶に残っていない一因なのかもしれない。「特別な何か」の喪失が非日常的なものから角を削り取っているのだろう。

 

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 これがロッジ。いつか機会があったら宿泊してみたいと思ったり思わなかったり。ここまで来るのが大変だから、よほどの動機がない限りは難しい気がする。ちなみに、ここのトイレに向かう途中に高知県愛媛県の県境がご丁寧に可視化されている。ここで一発「マージナルマン!」という深淵で高尚な小憎らしいアンチクショウをかましてやろうかと考えたが、実際に行動に起こすには些か明るすぎた。闇を寄越せ。

 

 さて、これにて四国カルストとはお別れ。あいにくの天気だったものの目的を果たすことはできたのでおおむね満足の行く訪問だったと言えよう。この思いを尾崎紀世彦の歌にでも乗せようかと思ったが、止めておいた。かき捨てられるほど図太い神経は持ちあわせておらんのだ。

 

 とんでもない山道を下って、目指すは「四万十・川の駅 カヌー館」。一日コースと半日コースの2つから選べるのだが、今回は半日コースを選択。あーだこーだしてレクチャーを受けてからレッツ川下り。「沈」する(いわゆる転覆のことを指す)こともなく、おかしくなる(いや、実際にはおかしかったと思う)くらいに川下りを楽しんで、気がつけばあっという間にゴール地点。迎えの車が来るまで四万十の清流に身を沈めたりしながら、日本最後の清流を全身で満喫してきた。もう少し暑ければ、もっと最高にエキサイティングな体験になったことだろう。次は夏に一日コースとリベンジを誓った。ちなみにここでその時にガイドさんが撮ってくれた写真を見ることができる。ちょいちょい写っているので、きっと分かる人には分かるはずだ。暇があれば探してみてほしい。

  それから、国道441号線を避ける(クソほど狭い。軽く事故れる。四万十市へ向かうには最短のルートなのだが……)形で、国道381号線を通って窪川まで行き(谷干城の誕生地碑がある場所! 何かの縁を感じる)、国道56号線に入って四万十市内にあるお風呂屋さんと飲食店をまずは目指した。晩ごはんと入浴を済ませ、ここでようやく『行程ノ二』における伏線を回収――つまり、寒さ対策のために100円ショップで簡易アルミシートを2つ購入したのである。もう怖いものは強盗くらいだ。

 コンビニで物資を補給し、いざ行かむ足摺岬へ。

 

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(展望台から太平洋を望む)

 

 星空を撮影するには月が明るすぎた。おかげでまるで夜明けを迎えたかのような明るさになってしまった。誤解のないように言っておくが、夜空がここまで明るかった訳ではなく、単に編集でこうしているだけである。今更ではあるが四国カルストでの写真も同じだ。写真右上にある何か映り込みのようなものの正体が分からない。不思議だが、まあそういうものだということにしておく。

 展望台があまりにも怖すぎて、撮影条件もよくなかったので、いい写真が撮れたと思い込むことにして、早々に撤退――岬というものは、どうしてこれほどまでに腹の底から恐怖心を揺さぶるのだろうか――、明日に備えて寝ることにした。得意げな顔をして広げたアルミシートは、しかし、使うことはなかった。車内はクソほど暑かったのである。無常。

 

 

 帰りが大変って、それ一番言われてるから。な最終日、無事故を祈って――。