ここはかくれが、ふたりきり。

わたしがいて、あなたがいる。あなたがいて、わたしがいる。どちらが先かに意味はなく、このひとときに、ひとりになれる。

ドキッ! 〜パンクもあるよ〜 男一人、地獄の自転車旅行 Final

最終日。今日はこれまでのように何十kmも走る必要はないので、7時過ぎまでゆっくりと惰眠を貪っていた。

ベッドからのそりと起き上がり、カーテンを開けて窓の外を見る。雨だ。結露が生じるくらいに気温も下がっているらしい。車のタイヤが雨を引きずる音がする。



そう。確実に襲い来る”あるもの”とは、雨の事だったのだ。

出発前の週間天気予報では、今日は曇りのち雨の予報だったのだが、昨日見てみると午前中から降り出すとのことだった。



雨合羽なんて持ってきてねぇよぉ! と困惑するかと思わせておいて、人間。心構えが出来ていれば大抵の事はすんなりと受け入れられるものであります。

もう確実に雨が降ることが分かっていたので、これ幸いにと輪行の決定を下したのだ。問題は輪行袋やエンド金具といった用具をどこで揃えるかなのだが、それも前日の内にリサーチ済み。

無料のしょうもない簡素な朝食を取り、身支度を済ませてからチェックアウト。とんでもない忘れ物に気が付いて取りに戻ったりしたものの、京阪に乗り大津パルコにあるサイクルショップライフで諸々一式を購入。



自分には、何を買うかあらかじめ決めておいて店に行っても、少し他の物と見比べるという癖がある。

今回も例外ではなく、オーストリッチ輪行袋――ロード320にしようと決めていた――を手に取ってしげしげと眺めていたところ、「輪行ですか?」と丸刈りに眼鏡を掛けた、物腰の柔らかな店員さんが声を掛けてきた。

そこで簡単にクロスを輪行したいということを伝えると、「それならこっちの方がいいですよ」と同じオーストリッチのE-10を勧められた。ロード320では大きさが足りないかもしれないとのことだった。

ズブの素人が独断と偏見で決めるよりかは、詳しい人の言うことに従うに限る。あの癖は、今回に限ってはいい働きをしてくれた。



初めての輪行に高揚と不安のせめぎ合いを感じつつ、石山駅前で相棒の袋詰め作業に入った。

タイヤの取り外しはもう慣れたもの。さしたる苦労もなく袋詰めを終えられるかと思いきや、



エンド金具の長さが足りない!



エマージェンシーエマージェンシー!

このままじゃ変速機がおしゃかになってしまう!

(このエントリーを書きながら調べたのだが、シートポストを下げればもっとリアディレイラーが浮くらしい。更にギアをアウターに入れればよいということも。実家から戻ったらもう一回やってみよう)

自分は、焦りながらも一つの解決策を捻りだした! グッジョブ俺!

二日目の朝に空気が抜けてしまっていた方のチューブを折りたたみ、ビニルテープでエンド金具にぐるぐると巻きつけたのだ。そしてどうにか高さを稼ぐことに成功した!

最後の最後まで焦らせやがる旅行だぜぇ……。



荷物を片付け、ハンドルが一部飛び出したままではある(おい店員さんよ、どういうこった)が、完成した袋詰めバイクを肩に担ぐ。

(うっ、おっも! なんじゃこりゃあ!)

口には出さなかったものの、これを担いで移動するのはなかなかに大変だ。加えて、それを担いで歩く人間への好奇の視線が刺さること刺さること。

人の視線は特に気にならない自分だったからいいものの、もうちょっとオブラートに包んださりげない視線にしてくれませんかねえ。



とまあ、不満らしい不満といえばそれくらいで、JRも近鉄も、改札で駅員さんに止められることもなく。

最後尾の車両に乗り込んで帰路につき、無事に帰りついた。

時間は14時少し前くらいだったかな。長いようで短かった自転車旅行は、ここで幕を下ろしたのでした。





今回の旅行(というよりかは修行に近い気が……)で感じたことや分かったことを、次のエントリーでまとめてみたいと思います。

そこのアナタ。そう、アナタですよ。もうしばしのお付き合いをお願いしますね。



〜四日目の記録〜

No Data , but Completed...